《MUMEI》
「らっしゃい!」
店にはちらほら、何人かの客がいた。
カウンターで手を降る男が一人。田中だった。
「こっちこっち!」
俺は駆け寄った。
「お〜!アッキー全然変わってねぇなあ!」
「そりゃ、久しぶりったって4年しか経ってないしな。」
久しぶりの再開で、しばらく思い出話に華が咲いた。
俺は余り酒には強くなかったが、この日だけは特別だった。
もうどれくらい飲んだだろうか?
追加のビールが俺の前に置かれた時だ。
「なぁ…雄太」
田中が急に神妙な面持ちで話しかけてきた。
「ちょっと頼みがあんだけど…」
「何だよ遠慮しがちに〜。水臭ぇなぁ友達だろ!?何でも言ってみぃ?」
酔いが回ってるせいか、俺はご機嫌だ。
「うん…あのさ、ここにサインしてくんねぇかな…?」
田中は鞄から一枚の紙を取り出して、ある空欄を指差した。
「何コレ?…レンタイ‥ホショウニン…?連帯保証人!?」
俺は一気に酔いが覚めた。「アッキー…お前、連帯保証人って一体…」
「頼む!何も聞かないでくれ!絶対お前に迷惑掛かるような事はしないから!」田中は必死に哀願する。
「…っつってもなぁ。」
「雄太しか頼める奴いないんだよ!」
「いやぁ…」
困った。まさかこんな頼み事を持ち掛けられるとは…でも田中必死だし‥
「じゃあさ、理由は聞かねぇ。ただ、いくら借りてるか位教えてくれよ。じゃなきゃサインは出来ない。」
「…一千万‥」
「はぁ!?一千万だと?嘘だろ?」
「嘘じゃない。紙にも書いてあるだろ…」
俺はもう一度見直した。それこそ、穴が開く程に。
「マジかよ…」
「頼むよ雄太…迷惑掛けないって約束するから!じゃないと俺…俺…」
田中は泣き出した。
泣き落としなんてズルイぜ、田中…
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