《MUMEI》
「…お前俺の事抱きたいとか思ってんの?こんな男だぜ?」
悔しいが衰えを感じずにはいられねえ40前の体。
太っちゃいねーが最近腹筋がやばい。
ちょっと弛みが出てきたし、ヘソ毛が一直線にあるし、裕斗と違ってあらぬところがあちこち黒ずんでいる。
まあ日本人なら大概黒ずんでいる部分ではあるのだが…。
ドイツ系ハーフな裕斗は美白な肌に、乳首もアソコも肛門だって薄いピンクだ。
下手な女なんか…
いや、綺麗な女だって敵わねえ。
明るい部屋のベッドに全裸で転がしても本気で絵になる。
普通どんな美人だってどっかしら見苦しい部分があったりするが裕斗はそれが全くない。
「秀幸は分かってねーな…、俺は秀幸の中身に惚れてんだよ〜、つか見た目も好きだけどね〜!
俺ン中じゃ秀幸は佐伯さんより隆志より全然カッコイ〜んだから」
「あ〜もう裕ちゃ〜ん!」
俺はドライヤーを止め、床に転がすと裕斗をぎゅっと抱きしめた。
嬉しいよ…素直に嬉しい。
「…俺だっていつまでも若い訳じゃねーぞ?秀幸はちゃんとその辺わかってる?」
「わかってるよ、一緒に年とろうな…、ああ…裕斗好きだ…
こんな俺でよけりゃ〜何時でも抱いてくれ…」
そんな逆に抱かれるなんて考えた事もなかったけど、そこまで思いきれたら、
そこまで深い関係になれたら、お互いの距離が更に縮まる気がしてきた。
もしかしたら裕斗は加藤君のところにいっちまうんじゃねーのかとか、加藤君は例え気持ちが自分にないってわかりつつも裕斗に傍にいて貰えるだけで幸せ感じちゃうかもしんねーとか…。
もしかしたらもしかしたらいつの間にか加藤君に裕斗の気持ちがいっちまうんじゃねーかとか
もしかしたらで頭ン中がいっぱいになって、でも俺は信じるしかねーって我慢して。
だって大人だから、こんなに年の離れた大人だから
うんと年下の裕斗に負担かけたくねーって、余裕あるとこ見せてせめて俺の事だけでも安心させてやりたいって…
「秀幸?」
「あんだよ」
「ごめん…」
「は?何であやまんだよ」
「だって…」
裕斗は俺の腕を振りほどき振り返った。
「秀幸…泣いてる」
「…あ」
真剣な表情の裕斗。
指先でそっと俺の目元に触れてくる。
「もっと……、俺に我が儘言って…、
我慢しないで…、本当に言いたい事…何でも言って?」
深く合わさりあう唇。
慣れた愛しい温もり。
「俺だけみてくれよ〜、なあ、好きなんだよ〜!」
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