《MUMEI》
「うん、…うん」
「何処も行って欲しくねー…俺だけ、俺だけの裕斗でいてくれよー……」
アルコールで上手く回らない頭何とか振り絞って俺は裕斗に思いのたけをぶつけた。
37年生きてきて、生まれて始めてこんなにも心をさらけだした。
いつもどっかで抑えてきたものが、どうにもならねー勢いで噴火した。
最後は何言ってんだかわかんなくなって、何だかぐちゃぐちゃに泣きまくった俺の顔を真剣な表情で拭ったり、抱きしめたり、背中を摩る裕斗がいて。
気がついたら二人、死んだ様に床に寝ていた。
俺は朦朧としながら裕斗を起こしてベッドに連れて行って、
きつく、もうお互い離れらんねーんじゃねえかって位力込めて抱き合って、
また意識を手放した。
▽
「あったま痛てえ…」
「俺も〜、でもお互い仕事だし」
二人してむくんだ顔。
いかにも二日酔い。
朝から熱い風呂に浸かって嫌な毒を抜く。
裕斗は俺に寄りかかながら手の平にお湯をすくって遊んでいる。
「買ったマンションの風呂はこうやってくっついてなくても余裕で二人で入れるぜ?」
「そうなんだー。つか見てーな早く」
「…な、近いうちにさ、ベッドだけでも良いから一緒に買いに行こうぜ?
そうすりゃいつでも泊まれるし」
「……うん
ごめんな…秀幸……、」
「何が」
「………、俺秀幸が大人な事にすっかり甘えきってた……
ごめん……
俺は秀幸に頼るだけで何もしてなかった
甘えるだけ甘えて秀幸の事全然支えてなかった……」
裕斗はそう言うと俺の方に体を向け、俺に跨いで抱きついてきた。
「こうすると安心する、落ちつく、抱かれたくなる……、愛してるよ秀幸…」
「裕ちゃん…」
俺の耳元に裕斗の唇を感じる。
裕斗は俺の頬に頬をぴたりとつけてきた。
「何も気いつかわねーで素で甘えられんのは秀幸だけ、……秀幸だけ……
秀幸にも俺はそう思われたい…」
「愛しいよ裕斗、…俺は裕斗以外いらねえ…、
俺はちゃんとお前には癒されてるよ
お前の負担になるかもしれねーがこれからは気いつかわねーで全部言わせて貰う……
そんなんでも嫌にならねーで受けとめてくれるか?
俺はお前にとって一度で二番で三番で、一億番までになりたい……。
俺だけ見て欲しい」
俺を愛しげに見つめる裕斗。
正面から見つめあう。
ゆっくりと近づいてくる唇。
前へ
|次へ
作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ
携帯小説の
(C)無銘文庫