《MUMEI》
白い棺
そして、俺は美緒さんに案内され


葉月さんがいる和室より広い


生前、春日さんが使っていた和室に入った。


春日さんが急変したのが、一昨日


春日さんが亡くなったのが、昨日の昼間


春日さんの通夜が、昨夜


そして、今日、この後


春日さんは、骨と灰になるらしい。


「…葉月が初めて役に立ったわね」


棺の前に来た時、美緒さんが苦笑しながら言った。


首を傾げる俺に、美緒さんは、説明してくれた。


葉月さんが普通に喪主をしていたら


普通だったら


俺は、春日さんの顔を見る事ができなかった、と。


(素直には喜べないな…)


俺が複雑な気持ちでいる中、美緒さんが棺を開け


春日さんを見せてくれた。


(本当に、寝てるみたいだ)


その中にいたのは


俺が今まで見た中で、一番、幸せそうな、穏やかな様子で目を閉じている


白い着物を着た春日さんだった。


(寒そうだな)


薄い着物を見てそう思った俺は


美緒さんの許可を得て


持ってきた、膝掛けを春日さんにかけた。


「良かったわね、キヨさん」


美緒さんはそう言って、再び棺を閉めた。

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