《MUMEI》
忍のつもりで
(そういえば、俺もこんな感じだった時、忍に怒鳴られてたよな)


俺は、葉月さんに自分を


美緒さんに忍を重ね、様子を見守っていた。


(まぁ、美緒さんの方が内容優しいし、何より美緒さんは葉月さんの妻だし)


それでも


葉月さんは立ち上がらなかった。


「見たくない、キヨさんが、死んだなんて…認めたくない…」

「それでも、あなたは認めなくちゃ。…それに、葉月はキヨさんが指名した喪主でしょ?」


春日さんはかなり前から、葉月さんを喪主と決めていた。


何故俺がそれを知っているかといえば


春日さんがその事を書いた文字を見たからだ。


その文字は、俺が、以前もらった手紙よりも遥かにしっかりした、美しい文字だった。


「ねぇ? 葉月…」

「嫌だ…」


(仕方ないな)


俺は、忍流で手助けする事にした。


「絶対見た方がいいから、行きましょう」

「い、…!?」

「祐也君?」

「見た方がいいですから」


忍流


それは、…強引に、人の話は聞かずに、自分の行動を貫く事


そして、俺は俺より背の高い葉月さんをお姫様抱っこして、春日さんの棺の前に連れて行った。

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