《MUMEI》
中川の提案
「成る程ね〜。」
中川はラーメンを啜りながら聞いた。
「で?お前ソレにサインしちゃったわけ?」
「はい…。」
「バッカだね〜お前!そんなん裏切られるに決まってんだろ!?」
「そんなっ!裏切られてなんか…」
雄太は意気込んではみたものの、実際自信がなかった。
「じゃあ、その田中って奴とは今連絡取れてんのかよ?」
「…いえ、全く…。」
「だろ?はぁ…お人よし過ぎんだよお前は。」
痛い所を突かれて何も言い返せない。
黙って俯いたままの雄太に、中川は続けた。
「後、どれくらい残ってんだよ?」
「800万くらい…」
「じゃあ、俺がそれ立て替えてやろうか?」
「え…?」
思ってもみなかった言葉に雄太は高揚する。
「本当…ですか?」
「あぁ、但し!条件がある。」
「何ですか?」
「今してる他の仕事を辞めること。それとアパートも解約しろ。」
「それじゃ俺、何処に住めば…」

(ホームレスとか嫌だぞ…!)

「ここに住み込みだよ。紙に書いてあったろ?」
「そういえば…」
雄太はポケットにいれた紙を見た。

『希望なら住み込み可』

「住み込みで800万円分働け。もちろん、その間給料支払はチャラ。どうだ?」
「それは…」

(タダ働きって事か…)

「嫌ならいいんだぜ?」
「やります!俺、何だってやらせていただきます!」
借金苦から逃れられるのなら…こんなチャンス二度とないと思った。
「何だってする?」
「はい!」
「二言はないな?」
「ないッス!」
雄太は張り切った返事をした。

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