《MUMEI》 瞳子さんの家は想像を超える豪邸だった。 厳かな日本家屋で二階は無いが広さは城のようだ。 日本庭園というものに初めて間近で触れることが出来た。 丹念に手入れされた松、石畳、池には錦鯉が当然の如く遊泳していた。 玄関に入るとき、何とも言えない緊張感が走る。 お手伝いさんが俺達が揃えた靴を脇に丁寧に並べたせいかもしれない。 七生達の乗る車は俺達より少し離れてたので先にお邪魔する形になっていた。 「六人だと少々、窮屈かもしれませんが、我慢してくださいね。」 ……瞳子さんは嘘つきだと思う。 家の和室を何個並べたらこの部屋になるだろう。 和風な室内ではあるが、黒い木の長い食卓テーブルが部屋を占めていた。 高そうな壷や花が飾られていて全体の雰囲気は和洋折衷で、それが妙に嵌まっている。 先程と別のお手伝いさんが待機していて、椅子を一つずつ椅子を引いてくれた。 あまりに世界が違いすぎて尻込みしてしまう……テーブルマナーがきちんと出来るか不安になっている。 『こんちはーーーー』 廊下から大声が響く。 「七生さん、いらっしゃったようですね!」 瞳子さんは座ってなかったら廊下を駆け出していたであろう、声音で分かった。 笑顔で廊下に視線をやっている。 足音も五月蝿い。 近付いてくると心音も高鳴る。 きっと、あの廊下を真っ直ぐ行って一つ曲がったところで七生が来るんだ……。 前へ |次へ |
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