《MUMEI》
日常
朝の冷え込みがきつくなり、布団から出るのが億劫で目が覚めても何度も寝返りをしてしまう。
季節は、11月の半ばを過ぎていた。年末は、会社はかきいれ時だ。
X′masのクセサリーやプレゼント商品で、年末に向けて商品注文が殺到するのだ。
電話オペレーター、ネット注文等、さばいてるうちにあっという間に定時は過ぎ残業で、帰宅は毎日11時過ぎだ。
別にどうって事はない。
私には、待つ人も『ただいま』もいう人も責任も束縛も何もないのだから。
あの晩、悠也はあたしを口汚く抱いたあとスースーと寝息を立てて、闇の中に落ちていった。
悠也の髪の毛を優しくすきながらあどけない寝顔を観察していた。
睫毛が長かった。
悠也が軽くうなされて眉間に皺を寄せるとやがて、ひとしずく涙をこぼした。
声も出さずに静かに無数の涙をこぼし、かすかに呟いた。
「あや・・・・」
別にどうって事はなかった。
さすがにあの後は、気まずくて悠也とは会っていない。
また、いつもどうり。起きて、仕事して、ご飯を食べてお風呂に入って眠るだけだ。
あや、綾、亜弥、彩、絢、亜矢、AYA・・・・・・・・・・・・。
悠也の過去なんて、関係ない。あたしがほしいものは、愛じゃない。
解っている。そんなこと自分自身がよく解っている。
三十三年も生きてくれば、純粋なだけではいられない。夢なんか見ていられない。
辻褄が合う事なんてないのだ。すべて矛盾だらけ。
いいや。本当は解ってなんかいない。
解らない。
・・・・悠也を本気で愛している。
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