《MUMEI》 生け捕りライムは身動きが取れない。 ダメだ。苦しい。息ができない。 (離せ!) (降参かライム?) (貴様!) (降参したら許してあげるが、そんな生意気な態度なら容赦しないぞ) 水中ではどうにもならない。勇気と蛮勇は違う。 (わかった降参) (よーし、いい子だ) オクトパエスはライムの鼻と口に透明の酸素マスクのようなものをはめた。 陸のように呼吸ができる。地球のものではないだろう。 (さあ来い) オクトパエスはライムを捕まえたまま、猛スピードで泳いでいった。 途中で異空間に入ったような気がする。日本の川の中ではない。なぜなら巨大な潜水艦が見えたからだ。 入口に魔軍の兵士が二人いる。オクトパエスが現れたので最敬礼をしたが、ライムを見て驚いた。 「え、まさか、天使ライム!」 「そうだ」 ライムがまばたきすると、兵士が騒いだ。 「あ、生きてる!」 「当たり前だ、バカ」 「もう生け捕ってしまったんですか?」 「俺様をだれだと思っている」 オクトパエスはライムをぐるぐる巻きにしたまま持ち上げると、兵士に言った。 「ベッドを用意してるか?」 「はっ」 兵士はキャスター付のベッドを押して来た。 「天使の剣を出せば無敵だ。俺がいる間に縛れ」 「よせ。抵抗しないから」 「そうはいかないぞライム」 オクトパエスはライムを優しくベッドに乗せると、手足を押さえた。 「よし、縛れ」 ライムは手足を拘束されてしまった。 「この程度の手枷足枷なら簡単に壊せるだろう?」 「無理よ」 「おまえら。俺がいる間にお寝んねしてもらえ」 「やめろ、抵抗しないから」 ライムの必死の言葉も虚しく、兵士がスイッチを押すと、ボクシング・グローブのようなものが出てきた。 「何をする?」 ちょうどボディの位置だ。ライムは腹筋に力を入れて構えた。 「やれ」 グローブがライムのおなかにボディブロー連打。 「やめ…うぐぐ、ぐ…」 たちまち気を失ってしまった。 オクトパエスは気絶したふりでないことを確かめると、兵士に警告した。 「おまえら。途中で淫らなことをしたら殺すぞ」 二人は震え上がる。 「しません。絶対しません」 ライムはついに悪魔の手に落ちてしまった。 実はライムだけでなく、沢村翔も狙われていた。 惨状愚魔総大将の側近。小悪魔エリカ。 長い髪。自称ライムに負けてない美貌。 セクシーボディを真っ赤なドレスに包み、喫茶店で読書している沢村翔の隣にすわった。 空いている店でわざわざ隣の席にすわる魅惑の美女。 翔はチラッと女の横顔を見る。すましていた彼女も、チラッと翔の顔を覗く。 目が合った。彼女は赤い顔をして慌ててそらした。 翔は本を閉じると、アイスコーヒーを飲む。 エリカもアイスティーをストローで飲んだ。 翔が立ち上がろうとしたので、エリカは急いで彼の腕を掴む。 「え?」 「あ、すいません」エリカは手を引っ込めた。 翔もすわり直す。 「どうしました?」 「あの、もう帰っちゃうんですか?」 目を見れず、俯いたまま、かすれた声で聞く若い女の子。 派手目のファッションと控えめな感じ。そのギャップがまた男心をくすぐる。 「何か?」 「あの、ダメもとなんですけど、メルアド教えてくれますか。正直ひと目惚れなんですけど」 翔は一瞬驚くが、いきなりエリカの腕を掴む。 「え?」 「君名前は?」 「エリカです」 「高校生じゃないよね?」 「大丈夫です。21です」 「じゃあ、メルアドと言わずレスリングをしよう」 「嘘!」 沢村翔はエリカの伝票を握ると、さっさとレジに歩いた。 (ククククク) エリカはほくそ笑む。 (何だ意外に悪党じゃん。ライムがやらせてくれないから爆発寸前?) 店を出た。エリカは作戦成功に笑いが止まらない。 (まあ、あたしの魅力にかかれば、地球の男なんてイチコロニコロよ) 翔はエリカの手を引いて、ホテルに入った。 前へ |次へ |
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