《MUMEI》
卑劣な攻め
ライムは弱気な表情で業師を見た。まだ何もされていないのに息づかいが荒い。
「ライム。今自分がどれだけ危険な状況に置かれているか。わかってくれたかな?」
「ちょっと、待ちなさいよ」
強気のライムが怯えている。惨状愚魔は興奮した。
「ライム。今おまえはただの人間の女の子だ。ただの女の子が、悪魔の業師に4人がかりで攻められたら、ひとたまりもないだろうな」
ライムは唇を噛んで涙をこらえた。ここで終わるのは無念過ぎる。
「おまえたち。容赦しなくていいぞ」
業師は惨状愚魔に聞く。
「本当にいいんですか?」
「構わん。その女は俺をバカにした。生かしておいたら示しがつかんだろ」
「でも、我々が攻めたら30秒で終わってしまいますよ」
「この生意気な小娘には愛想が尽きた。30秒でも20秒でもいいから、さっさと消滅させてしまえ」
ライムは惨状愚魔の冷酷非道に唖然とした。
「ひひひひひ」
「お嬢ちゃん。悪く思わないでね」
「ちょっと待ちなさいよ」ライムは敵意のない目で業師を見つめた。
「にひひひひひ。恨むなら総大将を恨みな」
業師が水着の上から敏感なところを攻めまくる。ライムはもがいた。
(どうしよう…)
ダメだ。どうにもならない。ライムは暴れた。
「ちょっと待って、ちょっと待って!」
止まらない攻め。まずい。耐えられない。
「待って、待って!」
あっ…。
「やめて!」
間一髪。
「はあ、はあ、はあ…」
汗びっしょりのライムは、惨状愚魔を見ながら乱れた息を必死に整える。
「ライム。武人の情けだ。チャンスをやろう」
「はあ、はあ、はあ…」
「俺は大物か。小物か。どっちなんだ?」
「だから、大物って言ってるじゃない」
「がっはっはっは。わっはっは!」
(悔しい!)
ライムは打ちのめされる思いで俯いた。
「ライム。かわいいところあるじゃねえか」
業師も、唇を噛むライムを蔑んだ目で見ている。
「そのかわいさに免じて命だけは許してやろう」
(無念…)
「おまえら。下がっていいぞ」
業師4人は、勝ち誇った笑顔でライムを見ると、姿を消した。
「ライム。俺を怒らせるとどうなるか。少しはわかってもらえたかな?」
ライムは瞳を閉じた。また業師を呼ばれたら困る。
「わかったわ」
「よーし、ならば俺のパートナー決定だな」
「それは…」
「強情だな。まあいい。ではゲームを楽しもう」
ライムは哀願してしまったことで自信を失っていたが、気を引き締めないと危ないと思い直し、奮起した。
惨状愚魔を毅然とした態度で見すえる。
「あっ?」
手足のベルトが解かれた。ライムは両手首をさすった。
「ライム。上の鉄棒に掴まれ」
「え?」
「床が抜けるぞ」
「あっ…」
ライムはジャンプして鉄棒にぶら下がる。床が真っ二つに抜けた。
「わあ!」
下は巨大な水槽だ。濃いブルーの水で底が見えない。
(何かいる!)
ライムは落ちないように鉄棒を握りしめた。
「落ちるなよライム」
かなりの落差がある。意識をしっかり持った。まずい。手が痺れてきた。
「ライム。ピラニアは好きか?」
「随分残酷なことを思いつくのね」
額に汗が光る。
「残念ながらピラニアじゃない。さて何か。スッポンか。ワニか。それともサメか?」
ライムは両手が汗まみれになって困った。汗で滑る。
「落ちてからのお楽しみだ」
惨状が消えた。と思うと下に瞬間移動した。どっかりと豪華なイスにすわり、酒を飲む。
「いいながめだ」
水槽の横から見る気か。ライムは限界だ。
「ダメだ。体を支えきれない」
片手ずつ変えて休ませようとしたが、汗で滑った。
「あっ、きゃあああ!」
ドボーン!
ライムは水中の生物を見た。
(オクトパエス!)
逃げ道はないのにクロールで逃げるライム。しかしすぐに捕まってしまった。
手足をぐるぐる巻きにされ、逆さまにされる。
(こいつら、どこまで卑劣なの…)

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