《MUMEI》
秘密兵器
「カニ下さいな」

「うちはまけないからね!」


(こ、こわ…)


志貴とおばさんの間に火花が見えた。


「大丈夫か? 祐也」


いますぐ逃げたくなった俺を


珍しく、かなりオーバーに真司が心配してきた。


そんな真司の背後に見えたおばさんの目がハートになっていた。


「随分男前のお兄さんだね」


その口調は、志貴に対してのものよりかなり優しい。


(このまま真司が値切ればいいんじゃないか?)


そう思う俺に


「祐也。カニ頼まれてるんだから、ちゃんと買わなきゃ。このお姉さんは優しいし、きっと大丈夫だよ」


真司は志貴に頼まれたセリフをサラリと告げた。


『土産代、払うから』


志貴のこの一言が、真司を動かしていた。


「そっちの細い子が、欲しいのかい?」


おばさんが、俺を見つめてきた。


おばさんは、初めて俺をまともに見たらしく、何故か目を丸くしていた。


(昨日心配かけたし…)


俺は、志貴に何もおごってもらうつもりは無いが


「これで、…買いたいんですが、…買えますか?」


そう言って、値札より安い金額の志貴の予算を取り出した。

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