《MUMEI》
メガトンパンチ
ライムは苦悶の表情でもがいた。オクトパエスは手足をぐるぐる巻きにしたままライムを水から出した。
息が乱れる。惨状愚魔は余裕を見せて酒を飲むと、ライムに言った。
「ライム。俺と組まないか。どのみち逃げられないんだ。生きていればいいこともあるぞ」
ライムはキッと惨状を睨む。
「こんな卑劣なことをする男とは組めないわ」
「ほう。じゃあ潜ってろ」
またオクトパエスはライムを沈める。ライムは暴れた。苦しい。
(嘘!)
今度は長い。まさか殺す気か。ライムは必死にもがいた。すると水の上に出された。
「ライム。これがラストチャンスだぞ。観念して俺と組め」
「だから、こんな卑怯なやり方じゃ答えは同じだって言ってるの!」
「そうか。じゃあ、さらばだライム」
惨状愚魔の指示でオクトパエスはライムを沈めた。苦しいものは苦しい。必死にもがく。しかし上げない。ライムは激しく暴れた。
(ダメだ…)
限界なのに上げない。観念したのか力尽きたのか。ライムは動かない。
すると、オクトパエスがライムを上げた。
「貴様オクトパエス、何勝手に上げてる!」
惨状は立ち上がって怒鳴った。オクトパエスは苦笑いを浮かべながらライムを沈める。
ライムがじっと我慢できるのは数秒。すぐにもがき苦しむ。するとオクトパエスはライムを上げた。
「このタコ!」
惨状は剣を抜く。
「命令に逆らうなら斬るぞ!」
その頃、沢村翔とエリカは。
部屋に入ればこっちのもの。密室だ。何でもできる。エリカは想像を巡らせた。
翔は結構イイ男だから楽しめる。まず裸にして手足縛って無抵抗の状態にしたら、文字通り人間業ではないマル秘テクでメロメロにして虜にしてしまう。
エリカはにんまりすると、翔を見つめた。
「どうぞ、先にシャワー浴びてきて」
「シャワーなんかいい。レスリングをやると言ったろ」
「レスリングでしょ。だからシャワーを浴びるんじゃない」
しかし翔はいきなりエリカのバックを取ると、足を掛けてベッドに倒した。
「きゃあ!」
エリカをうつ伏せにしたまま腕を取る翔。エリカは笑った。
「ホントにレスリングって洒落きつくない?」
翔は腕を捻る。
「イタタタタタ…」
どうやら洒落ではない。エリカは本性を見せて怒った。
「テメーいい加減にしろよ、ぶっ殺すぞ…イタタタタタ…」
さらに腕を捻る。エリカは力ではねのけようとしたが、びくともしない。
「嘘!」
おかしい。沢村翔はまさか人間ではないのか。
エリカは赤い顔で振り向き翔の顔を見る。
「え?」
顔面蒼白。沢村翔に化けていた強飛が上に乗っかっている。
「やい小悪魔。ライムをどこにやった?」
「知らないわ」
「死にたいか。教えたら命だけは助けてやる」
「あたしに乱暴なことしたら意地でも教えないよ」
「わかった教えろ」
「そんな上から目線の命令口調じゃ教えてあげない」
強飛は何を思ったかエリカを強引に仰向けにした。
「仕方ない。ライムは諦めた。その代わりおまえを殺す」
強飛が拳を振り上げた。エリカは慌てて両手を出す。
「待って!」
強飛は拳を止めた。
「何を待つ?」
「ライムの居場所を教えたら、あたしの身の安全を保証してくれますか?」
つぶらな瞳で強飛の目を真っすぐに見つめる。
「よし、いいだろう。ほかの奴は皆殺しにするが、おまえだけは助けてやる」
一方、ライムは。
沈められても苦しみもがけばオクトパエスが上げてしまう。
惨状愚魔は怒り心頭だ。
「オクトパエス。反逆者の汚名を着るか!」
ドアが開く。エリカが入って来た。
「総大将」
「エリカ。そっちはうまく行ったか?」
「大失敗です」
「何?」
エリカの後ろから強飛が現れた。
「きょ、きょ、きょうひ…」
強飛は虫の息のライムを見て、怒りの火柱が天井を突き破った。
「しーねー!」
ダッシュ。惨状の顔面にメガトンパンチ!
「ぎゃあああ!」

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