《MUMEI》
禁断の恋
惨状は吹っ飛び水槽に激突。そこを強飛が突進。メガトンキック!
「ぎゃっ…」
水槽が割れて水が流れ出た。
強飛はライムを抱きとめる。
「大丈夫かライム?」
ライムは薄目を開けると、強飛を見上げた。
「強飛」
「しっかりしろ」
「今だ、総大将を救え!」
兵士たちはだれも強飛に立ち向かおうとはせず、惨状を抱きかかえて逃走した。
「待ちやがれ惨状!」
オクトパエスも逃げていく。
「あのドSタコ、丸焼きにしてくれる!」
強飛が立ち上がろとすると、ライムは腕を掴んだ。
「待って、そばにいて」
強飛はオクトパエスを諦め、ライムを抱きしめた。
「大丈夫かライム?」
「ありがとう強飛。助かったわ。でも相変わらず助けに登場するのが遅いのね」
「立てるか?」
「うん」
二人をずっと見ていたエリカ。強飛はライムに手を貸して歩こうとしたが、エリカを見て止まった。
「おお、ここに一人逃げ遅れた奴がいるぞ」
エリカは慌てた。
「何バカなこと言ってるの。あなた記憶力ないの?」
「記憶力?」
「あたしの身の安全を保証するって約束は忘れたの?」
「そうだっけか。まあいい。上に伝えとけ。今度ライムに手を出したら皆殺しだとな」
「わかったから、もう行って」
強飛はライムを連れて帰る。エリカとライムは一瞬目が合った。
強飛はライムを公園のベンチにすわらせて、話を聞いた。
「罠にはめられたか。まあ無事で何よりだ」
「翔が心配してると思うから、帰るね」
「大丈夫か?」
「何が?」
ライムが見つめる。さっきまでは、かなり意気消沈していたが、少し落ち着きを取り戻したようだ。
「俺がついてる」
「頼りにしてます」
ライムは強飛と別れると、翔のアパートへ帰った。
「どこに行ってた。心配したよ」
「ごめんなさい。いろいろ、任務があるのよ」
「そっか」
それを言われると何も言えない。
夜。
いつも通りシャワーを浴びて、それぞれの布団の中に潜る。
しばらくすると翔が起き上がり、勝手にふすまを開けて四畳半の部屋に入った。
「寝ちゃった?」
ライムは目を開けると、呆れた顔で翔を見上げた。
「深夜レディの部屋に裸で来るか普通?」
「オレは普通じゃないよ」
「あたしが着替えていたらどうするの?」
「見てあげる」
そう言うと翔は、ライムの上に乗った。
「ちょっと待って、何してるの怖いなあ」
ライムも両手を出して警戒する。しかし翔は真剣な眼差しで迫った。
「ライム」
「どうしたの?」
「悩みがあるんだ」
ライムは優しい瞳で翔を見つめる。
「言ってごらん」
「好きになってはいけない人を、本気で好きになってしまった」
「え?」
ライムは慌てた。
「ライム」
「待って翔君」
「好きだよ。ライムのこと。本気で好き。恋してる」
言ってしまった。
言わせてしまった。
ライムは唇を結び、返答に困ったが、熱い眼差しで翔を見つめた。
「ライムが買い物に行くって出ていってから、ずっと帰って来なくて。まさか、このまま戻らないんじゃないかと考えたら、恐怖だった」
ライムは目をそらすことなく告白を聞いた。
「こんな恐怖、初めてだった。恋だと思った。気に障ったこと言ったかなあとか、まさか悪魔にさらわれたんじゃないだろうなとか、ずっと考えていて、何もできなかった」
ライムは静かに目を閉じる。そしてゆっくり開いた。
「翔君」
「大丈夫だよライム。ただ、気持ちだけは伝えたかった。好きで好きでたまらない。本音を言えば抱きたい。でも我慢するよ」
「翔君」
「ただ一つ絶対約束してほしいことがある」
「何?」
ライムは緊張の面持ち。
「黙っていなくなるのだけはやめてほしい」
「あ、それは大丈夫。そういうことはしないから」
ライムが即答してくれて、翔は少し安心した。
「ライム。抱きしめていい?」
「ダメ」
拒否されたが、翔は、ライムの髪に優しくキスした。

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