《MUMEI》

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菖蒲の間の襖の隙間から、鋭い眼光が兼松の背中を睨みつけている………。



兼松は、その視線に気づかず、場に据えられた「猪」の札を睨みつけていた………。




〆華は「萩に猪」にカスを合わせて取札に加える。



そして返しの札を捲ると、「桜に幕」の絢爛な色彩が現れた。



それは場に晒されていた字札に合わさった。



『クッ…………。』



兼松の顔色が青ざめる。



「月見」「花見」「猪鹿蝶」の15文役が〆華の手役に完成した。



『…こいです…』



チャンスと見るや、〆華は2度目の「こい」を宣言し、一気に畳み掛ける。



先ほど迄の兼松の余裕は、完全に鳴りを潜めていた。

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