《MUMEI》
1
ボコボコだ。

全身が軋んで、熱い。
気温とは関係なく汗が噴き出していた。関節が震えて、歩むどころか立つこともままならず、膝をついた。

「あーまずい」

歯抜けてるかも。
右肩外れてるかも。
肋骨折れてるかも。

ぼたぼたと水分が落ちていく。どうにか目を開くと、砂利についた手は、真っ赤に染まっていた。これは汗ではないらしい。

ついにその場へ倒れ込んだ。
治療しなくてはと思った。しかしもう指先の感覚すら薄い。

天に召される。
素直にそう思った時だった。

「これくらいじゃ、死にませんよ」

突然声が降ってきた。

誰?
こちとらデッドオアアライブをさ迷っているというのに、何と呑気な。

切り返せずにいると、額に手が当てられた。ひやりとして気持ちいい。

「大丈夫。オレが守ります」

澄んだ声。
これで自分は助かる。そう思ったら、力が抜けた。

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