《MUMEI》
真司の家庭事情
「ちょっと意外だったな」

「何が?」


あの後


予想以上に、おばさんは値引きしてくれた。


買い物に満足した志貴達と一緒に来た時計台の下で、俺は真司に話しかけていた。


他のメンバーは、観光名所の時計台を写メしたり、デジカメで撮ったりした後


昼食をどこにするか、真剣に話し合っていた。


「真司がノリノリだったから」


(普段クールなのに)


不思議そうに言う俺に


「おごりに弱いからな、俺は」


真司は少し照れながら言い


「うち、母子家庭でさ。節約精神身についてるから」


そう、付け加えた。


「母子…?」

「母一人、子一人って事。父親は、小学生の時死んだから。

…家庭事情が複雑な祐也だから、言ったんだぞ。

あいつらには、言うなよ?」


悪戯っぽく笑いながら、真司は他のメンバーを


両親がいる幸せな家庭の子供達を見つめた。


(俺は、…両親に、捨てられたんだよ、真司)


両親を幼い頃に亡くしたという、俺の嘘の家庭事情を知って、俺に自分の事を話した真司に


俺は、本当の事を言えずに


ただ、頷いた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫