《MUMEI》

七生、嫌いだ……食べ方は汚いし礼儀はなたてないし、……俺の膝に片足乗せてくるし!


「嫌い……」

七生が呟くので驚いてしまう。


「ピーマン嫌い。」

ピーマンのことか……、って、何で俺ほっとしてしまうんだ。
そして俺の皿にピーマンが移されていく。


「……ピーマンにはビタミンCが豊富に含まれている、また、ビタミンPが調理の幅を広げビタミンAは体の抵抗力を強める。」

乙矢、ピーマン博士だ。


「ビタミンなんてレモン食えばいいんだ、ピーでもパーでも苦かったら食べたくない。」

我が儘も度が過ぎる。


「このピーマンは新鮮な無農薬のものを食べやすいように煮込んでブイヨンベースに味付けされてますよ。騙されたと思って是非。」

瞳子さんがスプーンを七生に差し出している、所謂、アーンの仕種だ。
それを見て俺も冷静さを取り戻してきた、血が上ってしまい、七生の口に除けられたピーマンを放り込もうとスプーンでかき集めていたのが恥ずかしい。
そのまま、食べてしまおう。


「ンマー!」

七生のリアクションは無駄に大きい。
瞳子さんも七生が食べてくれて満足そうにしている。


「それも頂戴。」

俺が口元まで運んでいたピーマンを俺の手首を捕まえて強引に自分の口へ持ってかれた。


「……あっ!」

七生の肘が水の入ったグラスを倒し、俺の膝はあっという間に水浸しになった。


「お怪我はありませんか?」


「誰か、彼に乾く間で新しい衣服を用意したまえ。」

瞳子親子は場が凍り付く前に素早い対応をしてくれる。


「別室へご案内致します。」

早くもお手伝いさんがやってきた。

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