《MUMEI》

授業は数学!!

私は昔っから計算は大嫌い。

だから数学もキライ。



始めは先生の自己紹介から始まった。

数学の先生は、私たちの担任だ。

「君たちはもう知ってると思うが、一年生の数学を担当する高坂教夫(こうさかのりお)です。よろしく」

高坂先生はまだ新任で、私たちのクラスが初担任だ。

「じゃあお前たちも一人ずつ自己紹介してくれ。」


えぇ〜とか、ヤダ〜とか言う人がほとんどで、中には無言でため息をつく人も…

「じゃあ一番窓側から、ハイ!よーいスタート!」

半ば強引に自己紹介が始まった。


人それぞれ、名前、好きなこと、趣味、得意なことなど、個性ある自己紹介をしていった。


「和田航です…。趣味はサッカーです。よろしくお願いします。」

へぇ、サッカーかぁ…
そういえばなんか黒いしね。

「次りーちゃんの番だよ!」

私の前の席の高橋恵(たかはしけい)ちゃんがいった。

「えっ!?アッ、はい!
花川璃咲です。得意なことは食べることです。」

みんなどっと笑った。

何てったってこの頃の私は太っていて、小学校じゃいわゆる「でぶキャラ」で通してたくらい…。

一応女の子なのに…



恵ちゃんとは違う小学校だったけど、小学生の頃入っていたバスケットクラブで一緒だったから、すぐに打ち解けた。

他にも何人か、このつながりで知っている人がいる。
だから、特に不安などなくこんなことも言えるのだ。

こんな感じで全員の自己紹介が終わった。

まわりが騒がしい。

「あはは!うけるよなぁ!得意なことが食べることって!」

「ほっとけ!これぐらいしか言うことがないんですぅ!」

和田の前に座っているこいつは、照井博正(てるいひろまさ)。同じ小学校だった一人。

すると、照井は和田と話しはじめた。


「こいつこんなデブだけど仲良くしてやって(笑)」

「え〜ヤダよ〜!」

あらあら、さっそく意気投合っすか。
男ってやつは本当にもう…
「マジでほっとけ!余計なお世話だ!」

「キレてますか?」

「古いゎ!」

悲しいくらい古いネタだな。


にしても和田め!

初会話であの態度はないだろ!

やっぱハラタツ!


でも、そんなとっつきにくいやつではないみたい。

すると男子どもがワラワラ集まってきた。

私のことをバカにしに来たのだ!

「中学生なんだから少しはダイエットしろよぉ(笑)」
「お前はばとりすぎだよ!和田がかわいそうだろ」

「うるさーーーーーい!少しはだまってろ!」

「アハハハハハ!」

笑ってんじゃねぇよ!
つうか何人かとはまだしゃべったこともありませんでしたけどォ?


男子たちは異様なまでにフレンドリーに絡んでくる。
それもそのはず、私は性格もどっちかっつったら男っぽい。
言葉遣いだって乱暴だ。

だから男どもは、私のことを「女」ではなく、「男」と見て接してくる。

私もそれでよかった。
男は男以外のなにものでもない。ましてや恋愛的に見たことなんてなかった。

でも、心のなかではいつか友達では押さえられなくなるときがくる。
そうわかっていた。

誰しも昔は男女問わず仲が良いものだ。
しかしいつからか「男」と「女」という別々の道に別れ始める。

早かれ遅れ、絶対にその時はやってくるのだ。

私は、周りの人たちを見てそれがわかっていた。

誰が誰と付き合うだの、誰が誰に惚れただの、そんな噂が耳に入るたびに、それを実感した。

友達の「好き」が恋愛の「好き」にかわる瞬間は、はっきり言って誰にもわからない。
本人でも気付かぬうちに「好き」はかわっていくのだ。

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