《MUMEI》
呼び出しの理由
「教師役やってほしいんだけど・・」
お湯を沸かしながら言う彩詩。
「教師役だと?」
意味が解らないといった様子で聞き返す。
「そそ、狩月に・・って狩月って知らないか。」
「狩月・・」
教会の前で出会った男の顔を思い出しながら言葉にする。
「ちょっと変わった人でね。明日からしばらく剣術とか教えてあげる約束してさ。」
言いながらお茶を淹れる。
「紅茶でよかったよね?」
「あぁ。」
ハンディングの向かいの椅子に腰掛け、
「お願いできないかな?式夜も一緒に教えるつもりなんだけど・・」
やれやれと首を振りながら、
「・・断った所で、強制的にやらされるのは眼に見えているのだが・・・しかし我が教えられることなど・・」
「ありがと。」
ハンディングの言葉を遮り礼を言う彩詩。
(相変わらず・・変な者だ。)
フードを取り払い室内の光に照らされている顔は楽しげに笑みを浮かべていた。
フードについては、彩詩と数時間にわたる言い争いの結果、彩詩、式夜の前では取り払うということで一応決着をつけていた。もっとも彩詩は、隠さなくていいのに・・とまだ不満気ではあるが。
「みんな忙しくてね。なかなか暇な人がいないんだよ。」
彩詩はお茶菓子として出したクッキーをおいしそうに頬張りながら話す。式夜が見たら「だらしが無い」と怒るのだろうなと思い、こんなことを考えるのは自分らしくないと苦笑する。
どうも彩詩と話をしていると自分はよく表情を動かす。彼女の持つ、お気楽オーラでも感染したのだろうか・・とまた苦笑する。
「ハンド〜聞いてる?」
「うむ。」
「・・・それでね?」
「うむ。」
「あのさ・・ハンド?」
「うむ。」
「話聞いてないよね?」
「うむ。」
「・・・・・ハンドの馬鹿」
ボソリと呟く。
「そなたほどではない。」
「そういう所だけは聞いてるし・・」
大きくため息をつく彩詩。

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