《MUMEI》 笠松は部屋から傘を失敬すると、大雨降りしきる私鉄の線路沿いを歩きながら、携帯をとり萩原に連絡を入れた。 鶴見一家の組事務所襲撃に加わるのを拒んだ件を一言詫びようか、とぼけて誤魔化そうかと、長いコールの間に迷いがよぎる。 そうこうするうちに電話は繋がった。 『おぅ俺だ…どうだ? …猪俣は仕留めたのか?…』 結局いつもの様にヘラヘラと笑い振る舞う…。 電話の相手は只黙っているだけだった。 笠松は、その沈黙の意味を萩原の怒りだと感じとった。 失敗したと思ったが、今更神妙な口調に変えたところで、風見鷄と見下されるのは目に見えている。 もはや、怒るなら怒れと開き直って話し続けるしかなかった。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |