《MUMEI》

……美樹……
そうか…俺は地獄に落ちたんだな……
 
…美樹が居るはずはないな…
…佳祐でも、探してみるか…
 
誰も、居ない   何も無い   風も  色も   何も…    無い   
自分の腕さえ、見えなかった… 
 
 
執事「お目覚めでございま すか?」
 
雅治「……」
 
視力が回復してきた
 
雅治「…生きているのか…」
 
清次に仕えてた、水無月の執事が、そこに居た…
 
 
俺は、この執事に助けられたのか?
 
 
身体を動かすと、激痛が走った…
 
執事「ご無理をなさらず… 」
 
雅治「…どうなったんだ… 」
 
執事「……わかりません… 私が、駆け付けた時には 雅治様が、藪の崖下に、 倒れて居たのです…」
 
雅治「清次は?」
 
執事「……生き絶えてまし た…」 
 
雅治「……他の者は?」
 
執事「…屍の山でした…」 
 
雅治「……」
 
身体を、起こした
 
執事「雅治様、ご無理をな されては…」
 
雅治「…生きてるなら…」 「まだ、やらねばならぬ 事が…」
 
執事「しかし、雅治様…」 
 
俺は、足の骨が折れて居た……
 
執事「医者も呼べない状況 ですので…」
 
雅治「あんたが、手当てし てくれたのか、…」
 「…恩にきる…」
 
執事「清次様は、見事な最 後でしたか?」
 
雅治「……あぁ、見事な、 最後だった…」
 
執事「ありがとう、ござい ます、…嘘でも……雅治 様に、そう言ってもらえ れば……浮かばれます… 」
 
雅治「……」
 
 
俺は、山小屋みたいな所に居た、
 
清次の手下の何人かが、俺を運び込んでくれたようだ……
 
谷から水を酌んできてくれた手下
 
手下「どうぞ…」 
 
執事「そんな、壊れた茶碗 で、出す奴があるか!」 
手下「…」
 
雅治「すまない、有り難く 、頂く」
 
俺は、その水を飲んだ
 
執事「生水など……」
 
雅治「いや、ありがたい… 」
 「今の、俺には、これ以 上ない、物だ…」
 
執事「…敵、味方がわかり ませんので…」
 
雅治「恩にきる、…」
 「山を、降りれるか?」 
執事「使いの者をだしまし たが、連絡はありません ……」
 
雅治「……そうか……」
 
目が、霞む……
 
執事「雅治様!どうなされ ました!」
 
雅治「ワガママを言う」
 「山を降りよう」
 
執事「無茶です!足が折れ ているんですよ!」
 
雅治「ここも、いつまで安 全か… 」
 
執事「……わかりました… 今日は、もうすぐ、日が 落ちます…」
 「明日の朝、山を降りま しょう……」
 
 
この、山小屋は、あまり知られてはいないが、追ってが来ないとは限らない…
 
俺の意識が戻ったなら、
移動する方が、無難ではあるが…
 
執事は、竹と紐で、折れた足に、ギブス代わりの物を作ってくれた…
 
山を降りるのに何日かかる事か…
 
それでも、行かなければ… 

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