《MUMEI》

懐中電灯の灯りが俺を照らした
 
雅治「…」
 
もう、力も出ない…
どうにでも…な、れ…
 
床に倒れ込んだ…
 
茜「雅治!」
 
 
雅治「…茜か?…」
 
茜に抱き起こされた
 
茜「雅治、生きていたのね 」
 
ボロボロ泣く、茜
 
茜に抱きしめられ、茜の涙が、俺の頬に…
 
雅治「生きてるさ…」   「死にそうだがね…」
 
 
奥のプレハブで、茜に手当てを受けた…
 
茜「折れてるわ…」
 「紫になって、倍ぐらい に、腫れてる…」
 「熱も、凄いわ…」
 
雅治「茜…エスティマで、 目黒へ…」
 
茜「目黒?」
 
雅治「行き付けの病院なん だ…融通がきく…」
 
茜「わかった、」
 「しっかりしてね」
 
 
 
目黒の病院…
 
そう、美樹を中絶させ、避妊処置させた、潜りの病院だ…
 
茜「雅治…目黒よ、どっちに…」
 
築40年は経つ、古い鉄筋コンクリートのビル
 
そこの地下が、病院になっている
 
勿論、看板などはない
 
扉を叩いた…
チャイムを鳴らしたって、出て来やしない……
 
茜「…留守かしら…」
 
隠しカメラが有る方を見て扉を叩いた
 
 
扉が開いた…
 
先生「朝から、うるさいな ぁ…まったく…」 
 「電話してから来てもら わにゃぁ……」
 「………死にかけてるの か?」 
 
雅治「飲んだくれて、寝て なかったか…」 
 「先生、悪いが…」
 
先生「中へ入れなさい…」 
茜「すみません…」
 
俺は、酒臭い、先生と、茜に引きずられ、中へ入った 
 
 
先生「なんだ、これは!」 
茜「先生、なんとか治療し て…」
 
先生「わかってる!」
 「借りがいっぱいあるか ら、なんだってしてやる が……」
 
 「どうしたら、こうなる んだ…」 
 
雅治「…歩いちまった…」 
先生「…バカが…無茶しお って…」
 「骨が、皮膚から飛び出 しそうだ…」
 「ここじゃ、無理だ…」 
雅治「先生…頼むよ…1年 …いや、半年動けばいい …」
 「なんとか、してくれ」 
先生「……」
 
雅治「元々は、外科の名医 だろ…」
 
先生「骨を、繋ぐものがな いんだよ…」
 
雅治「走れなくていい…」 「歩ければ……」
 
先生「…むぅ……」
 「後で、文句言うなよ… 」
 
俺は、精一杯、笑った
 
雅治「頼んだよ、先生…」 
先生に注射され、俺は意識が薄れて行った
 
 

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