《MUMEI》
真司の必需品
「悪かったな、昨日は」


真司と二人部屋に入った俺は、まず昨日部屋に行けなかった事を謝った。


(修学旅行に一人って、虚しいよな)


そんな俺に、真司は


「いや、全然。自分の好きな事出来たし」


そう言って、バックの中から





何故か、サッカーボールを取り出した。


驚く俺に、真司は


「ボールは友達だからさ」


悪戯っぽく笑ってそう言った。


「そ、そうだったのか!?」

「…祐也、それ本気で…

だよな、祐也だし」


更に驚く俺に、真司は一瞬目を丸くしてから、一人で納得していた。


そして


「一日一回はサッカーボール蹴らないと落ち着かないんだよ。

だから、旅の必需品なんだ」


そう言って、狭いベランダで器用にリフティングを始めた。


「そうなんだ」

「あぁ」


(すごいな)


俺と会話しながらも、真司がボールを落とす事は無かった。


「本当に、サッカーが好きなんだな」

「…好きなのもあるけど…」

「?」

「後で話す」


真司のリフティングは、夕食の時間ギリギリまで続いた。

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