《MUMEI》
バイキング
「よし!食うぞ!」


夕食は、和洋中のバイキングで、珍しく守が先頭だった。


「基本的にテンション高いよな、あいつ」

「だな」


俺と真司はその後ろに並んだ。


「し、志貴。湯上がり、綺麗、だね…」

「変態っぽい」





「あそこはどこでもいつも通りだな」

「だ、…」


浴衣の志貴と、制服の拓磨を見て頷こうとすると


最後尾の瀬川と渡辺が、クスクスと


拓磨を笑っているのが見えた。


一日目と同じように温泉があるこのホテルは


女性には特に、数種類の浴衣を用意していて、ホテル内は浴衣で移動可能だった。


だから、志貴同様、他の二人も浴衣で


「志貴ちゃんしか見てないんだから」

「ね」


笑いながら、拓磨をからかっていた。


「訂正。いつもより、可哀想だな」


小声で言う真司に、俺は頷いた。


「おい! スープカレーあるぞ!」


そう言う守が持つトレイの上には、大量の寿司がのっていて


「お前、バランス考えろよ」


真司は呆れたが


「だってどっちも食べたいじゃん!」


守は、『苦しい』と言いながら、宣言通りどちらも食べていた。

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