《MUMEI》
独眼
「着替え終わりましたら濡れたものは籠に入れて下さい。」

案内された部屋は丁寧に籠まで用意されていて、客間のようだ。洋式のベッドに白いカーテンがモダンな印象を与えた。
全身を映す鏡が置いてあり、その前で着替える。

災難だ……。
よくもまあ、こんな次から次へとアクシデントばかりに遭うものだ。

制服は腹から腿にかけて湿っている。
用意された服は白いシャツに黒いスラックスなのだが、普段着とは思えない上等な品物だった。

下が濡れすぎて先に脱ぐ。
シャツだけ先に着たら、腿までの丈だった……短パンくらいの長さで上一枚だけでも違和感無い。










……気配。

鏡越しに映る扉の隙間から、目が見えた……気がする。


「ゆ……ゆーれいさんですか?」

あ、幽霊に遭ったら話しかけちゃ駄目なんだっけ?


「……いません。」

扉が閉まる。


「……なっ、ななおだろ!」

声ですぐ気付いたわ!
扉を開けて確認、逃げてく後ろ姿を追いかけようとしたら、転んだ……。
俺、鈍臭い。

痛い……、惨めだ。


「う……」

涙が出そう、泣くものか。


「二郎!怪我したのか?!」

七生が抱き起こす。
触れる体温に安堵した卑しい自分がいる。

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