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《MUMEI》 愛は会社を救う(79)「赤居さん！」 突然呼び止められ、私は無言のまま振り返った。 「"この前"は、申し訳ありませんでした」 こちらに向かって、由香里が深々と頭を下げる。 "この前"とは、由香里のおごりで酒を飲んだあの晩、居酒屋を出た後のことだ。 「気になさらないでください。でも、私が教えられることは、あの時全てお教えしたつもりですよ」 羞恥のため、由香里の白い肌がさっと桜色に染まる。 「あなたの記憶力は人並み外れている。加えて、知識を人に伝達する能力も抜群に優れています」 そう言いながら私は、悦楽の波間にたゆたう由香里の、艶やかな姿態を想い起こしていた。身体の中心には、いつも通りの確かな自信が漲っている。 「会社で仕事を教えているように、山下さんにも、あの夜覚えたことを教えてあげればいいんです。あなたなら、きっとうまくやれますよ」 （彼女のことだ。何も心配は要らない） 安心したように微笑む由香里にゆっくりと背を向け、私はあらためて屋上を後にした。 前へ |次へ |
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