《MUMEI》

「まつりってお父さんが名付けたの?」

叔父が唐突に尋ねてきた。

「父が付けました、女だと思っていたらしいのでその中で一番男らしいのを選んだようで。」

高遠の前で名前云々は気が引ける。


「体の弱い男子には女の子の名前を名付ける風習があったんだよ。茉理はきっと大切にされていたって信じている。優しい茉理、好きだよ?」

高遠……、俺も嫌いじゃないかも。
深いところまで関わらないように歩み寄ってくれた距離間が心地良かった。


「私も好きよ?」

棗が割り込む。


「俺も好きだな。」

叔父……俺を見る時の視線が怖い気がした。


「私だって、だっ……だいすきっ!」

真っ赤にして莉子も参加してくれた。
これは嬉しい。


「茉理、罪だな〜」

光が変なフリをしたからだろう。


「罪だね、茉理は。お仕置きだ!」


「ぎゃああ!」

叔父から突然抱き着くという奇襲をかけられた。


「……光の弟としては合格かな。男だったら捻り潰してたけどね?」

叔父が小声で何かを囁いている気がするけど聞こえない、聞こえないぞ……!
息苦しいだけで首は締まってないぞ!


「いいから、そういうの。離してあげて。」

光が叔父から俺を引きはがす。


「光ちゃん……、愛されてるわね。」

棗め、分かっているなら助けてくれよ。


「光……さん……」

莉子が気付き始めた。


「あー、莉子、なんか食べたくなってきた!」

莉子の手を引いてその場から離れる。


「何よ、……お兄さん達、それでは。」

去り際、丁寧に莉子は会釈していた。
俺のお腹空いたは莉子が半分以上俺の代金を持ってくれる三分の二割り勘である。
俺はどうしても、国立大学を卒業して自立して……莉子と結婚式を挙げたい。
そのために、貯金と勉強は欠かせないのだ。

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