《MUMEI》 落ち込み過ぎ行列に並び、ホッキョクグマを見た後、俺達は遅めの昼食をとる為に、園内のレストランに入った。 「ねぇ、志貴ちゃん。アレどうにかしたら?」 (『アレ』って…) 割とはっきり物を言う瀬川の言葉に、俺は苦笑した。 瀬川がアレと呼んだのは 落ち込んだままの拓磨だった。 「暗いぞ!拓磨」 守にバシバシ肩を叩かれても、拓磨は反撃しなかった。 「あんまりいいとこ無いから落ち込むのはわかるけどな」 (真司…お前も結構ひどいな) 真司はマイペースに日替わりランチを食べていた。 というか 全員が、日替わりランチを頼んでいた。 だから、当然拓磨の手元にもランチが来ているのだが 拓磨はため息をつくばかりで、まだ一口も食べていなかった。 「写真位で落ち込むのやめなさいよ」 志貴は呆れたように拓磨を見ていた。 (まぁ、そうだけど…) 俺と 先ほどから無言の渡辺だけは、拓磨に同情していた。 「私、後で二人の写真撮ろうか?」 「真理子は優しいのね…仕方ないなー」 恐る恐る口を開いた渡辺に、志貴は優しく微笑み、顔を上げた拓磨に『一枚だけよ』と告げた。 前へ |次へ |
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