《MUMEI》

足早に川崎を離れる笠松の歩みは、多摩川を渡る国道の橋の途中で止まった。



『萩原が居なくなったら、もうこの辺りで仕事はできねーな…』



笠松は独り言を呟き、大きな河川の堤防から拳銃と携帯電話を捨てた…。




゚・:*:.。*。.:*:・゚*゚・:*:.。*。.:



桜庭の声は、あの時の電話の相手……猪俣と同じだった…。



兼松の溝落ちに一筋の汗が流れ落ちる…。




桜庭は兼松に一礼し、菖蒲の間を出て行った。



襖を閉める間際…



桜庭は兼松に向けて鋭い眼光だけを残していった。

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