《MUMEI》
女王様と犬
「ただし、ランチをちゃんと食べてから! あと、触らない事!」

「それでもいいです!光栄です!ありがとうございます!」

「ちょ、声大きい!」


長身でガタイのいい拓磨が、志貴に何度も頭を下げながら、敬語で対応する様子は


(完全に、女王様と犬だな)


言葉にしない俺の気持ちを


「拓磨、下僕みたい」

「つーか犬だな」


守と真司はあっさり口にした。


「じゃあ、志貴ちゃんが飼い主ね」


瀬川もそれに便乗したから


「「なっ…!」」


志貴と拓磨は絶句し


「あんたのせいよ!」

「ご、ごめんなさい!」


その後のやりとりは、また俺達や周りの客達に


二人の関係を『女王様と犬』と印象づけてしまった。


「祐也と真理子は違うわよね! 私拓磨の事なんて犬なんて思って無いからね!」

「俺だって! 志貴を女王様だって… …」

「その間は何! 否定しなさいすぐに」

「お、思ってません! ごめんなさい!」

「「ま、まあまあ…」」

「二人はやっぱりいい子ね!」


(いや、怖くて言えないだけなんだけど…)


…渡辺と俺は、同じ表情をしていた。

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