《MUMEI》
久しぶりの再会
「裕斗!チョ〜久しぶりぃ!」
「あ〜……えっと…」
「ちょっと〜!忘れたの?『始まりの〜』で共演した…」
「あ!ごめん!紗枝だ!さえちゃん久しぶりっ!」
裕斗はやっちゃった〜みたいな表情でパイプ椅子から立ち上がった。



「ドラマの共演者を忘れるとは裕斗もなかなか偉くなったんじゃないの〜?」
「忘れてねーよ、紗枝があんまり綺麗になってたから一瞬わかんなかっただけだよー」

「え?」

裕斗はアタシの顔をみながらニコニコ笑ってる…。

「裕斗もカッコ…よくなったよ?」

「ありがとう」

−−−ああ…

やっぱり綺麗…
カッコイイ…


ドラマではアタシ達は恋人同士を演じていた。
二度程キスシーンもあった。
アタシは凄く緊張して臨んだのに裕斗はなんの緊張感もなくこなしてたっけ。

なんとな〜く彼の恋愛経験の多さを垣間見た感じだったのよね。
だって凄く慣れてたから…。

「ねー今日収録終わったんなら飲み行こうよ」
「あ〜…そうだね、久しぶりにあったんだし行こうか?」


やったっ!
楽屋の前歩いていたら裕斗の名前見つけて、おもいきって声かけてよかった。


ドラマの撮影中好きになっちゃったんだけど、裕斗は伊藤さんと気があっちゃってあんまり仲良くなれなかったんだよね。

共演者の中で唯一のタメだったから、お互い呼び捨てで呼んではいるけどそんなにお互いの事は知らない…。



よし!今日は頑張って


この男を落とす!!



「裕斗ってさー、彼女いるの?」
アルコールの力を借りて1番始めに聞かなきゃならない事を聞く。

「ン〜、彼女はいないよ」
「え〜マジで?ドラマん時もいないって言ってたよね?
誰か紹介しようか?」

な〜んてね。
うんって言ったらアタシを紹介するんだ。
ちょっと胸の谷間を強調させて彼を上目使いで見る。

「あ〜いいよそれは、フフッ…」
裕斗はアタシの胸に気がついたのかアタシの顔を見るふりをして谷間を…


間違いなく今見たッ!!

裕斗は正面を向いてグビッとカクテルを一気に飲み干した。
ああ、焦ってるな…
こんなに強いアルコール一気に飲んじゃって……。

アタシは更に巨乳を強調しようと二の腕で胸をぎゅっと寄せた。寄せて少し裕斗の方に体を傾ける。

「すいません、バーボンロックで」

「あ〜アタシもください」

目線があったバーテンダーはアタシの目的を察知したのか一瞬だけ笑った。

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