《MUMEI》

樹、厳密に表すとアヅサは生物室で目撃した人数を覚えて襲った。

指輪を嵌めて殴っていたのだろう、そのときに篝の歯が折れた。


「指輪は殴ったとき痛いと思って使った。  俺を探し出して貰うためにお前だけは生かしたんだよ。」


樹が密着ぎりぎりまで近付いてくる。


   「離れろ」
声を張って叫んだ

「汚いからか?
樹はなあ、お前なんかよりずーっと綺麗だね。
あと、俺の樹誑かすの止めろな?」
殆どの視界の面積が樹で充たされる。
アラタの喉に彼の指が触れて離れた

   「腐る」
アラタは掻きむしりたくなる衝動を抑えた。



「このまま、殺したり
人質にとったら
お前の後ろの奴らがあぶり出せるだろうな」
樹は深い闇色に同化している。陰り帯びた瞳。

アラタが知る限りの彼では覚えのない顔だ。




「―――冗談。」
樹は両手を花のように広げて散らす。
口元が悪戯がばれた子供のようだ。


「 怖かった?
樹への報復がメインだったし。体も流石に限界みたいだし。
なにより



樹が斎藤アラタを傷付けたくないんだとさ。」
樹は鼻で嘲笑した。

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