《MUMEI》

「蘭」

「はぃ?」

「──邪魔もんがいねぇ内に‥渡しときてぇもんがある」

「へ?」

「‥‥‥‥‥‥‥」

「? ──!?」





鳳君が、

いきなり私の顔面目掛けて拳を突き出して来た。





「‥手ぇ出せ」

「──ぇ」





言われるがまま、

片手を出したら。





ちっちゃい何かが、

落ちて来た。





「‥?」

「‥紛いもんだけどな、一応これだけは‥アイツに先越されたくなかったから」

「───────」





指輪だ──。





「ほわぁ‥」





可愛い‥。





「──じゃ」

「ぇ、もう行っちゃうの?」

「フ‥、何だよ、珍しいじゃねぇか」

「ぇ?」

「──お前が俺を呼び止めるなんて、滅多にある事じゃねぇしな」

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