《MUMEI》 巫女姫戌の刻。 邸の庭に聳える一本の桜を、ぼんやりと見上げている巫女姫がいた。 「夜桜」 声をかけたのは、七尾。 「今日はまだ床には就かんのか」 彼女は巫女姫の傍らに来ると、月色の眼を、ゆっくりと桜の方に向けた。 「今日は‥風があるな」 ざわざわと揺れている梢から、はらはらと花びらが離れて行く。 「三匹は‥もう寝たのか」 「──ぁぁ。もうすっかりな」 三匹、というのは‥巫女姫と暮らしている妖達の事だ。 七尾と同じく、その妖達はこの邸に住まっている。 あたかも、身内同然に。 前へ |次へ |
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