《MUMEI》
嫉妬
―ドサッ―

部屋に戻った雄太はベッドに倒れ込んだ。
「なんだよ…あの態度。昨日の今日だぜ?いきなり過ぎじゃんか…。」
中川の冷たい態度に不満を零す。

ふと目に入った先程のバイブをチラッと見る。
「だって…嫌なものは嫌なんだもん…。」

―コンコン!―

ふて腐れていると、部屋がノックされた。

「はい。」
扉を開けると、そこには中川が立っていた。得に表情は普通な感じだ。
「何でしょうか?」
「今日の夕飯、3人分作っといて。」
「え…?何で…」
「田辺も食っていきたいってさ。」
「すいませ〜ん」
‘エヘッ’といった感じで、田辺がヒョッコリ顔を出した。

(どっから湧いて来たんだよ!?)

「じゃ、そうゆう事だから頼むわ。」
それだけ言ってアトリエに戻ろうとする中川達を呼び止めた。
正確には中川だけだが。
「ちょっと待てよ!」
「何?」

余りに違い過ぎる中川との温度差。
それでも雄太は噛み付く。
「勝手な事言うなよ!何で俺がそこまでしなきゃなんねんだよ?」
「家事はお前の仕事だろ?」
「そうだけどっ!でも田辺の分まで作る義務ないだろ!大体何なんだよソイツ!?」
雄太は勢いに乗って気になっていた事を聞いた。
この事が一番胸に突っ掛かっていたのだ。

「俺、モデルだよ?」
ずっと黙っていた田辺が会話に入って来た。
「モデル…?」
うっすらとは気付いていたが、いざ直接言われると雄太は困惑した。
「うん。この仕事時給いいし、前もやらせてもらってたんだよね。ね?中川さん!」
「前もって…?」
雄太は硬直した。

(俺が知らない二人の世界があったなんて…)

雄太は自分の中に嫉妬が生まれるのを感じた。

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