《MUMEI》 不在「お前は分かるか‥? 狐叉」 そう名を呼ばれた七尾は、ゆるりと尾を風に靡かせて考え込む。 「いや──私も‥こ奴のような妖に出くわした事は無いな‥」 「そうか──‥」 別に、この妖が何であろうと変わりはないのだが。 夜桜は、何か不思議な心持ちがしていた。 (‥鼠では無いし‥かといって綿埃のようなものでもあるまいし‥) 「──姫ー」 「‥?」 夜桜が振り向くと、そこにいたのは三匹の妖達だった。 「どうした──目が覚めてしまったか」 「うん──‥」 「それで、おれ達な、さっき彩貴のとこに行ったんだ」 「でもな、彩貴いなかった」 「何‥?」 百鬼夜行はまだ先だ。 何か、悪霊でも出たのだろうか──。 だがそれであるなら、自分が霊気を感じない筈はない。 (ならば‥どうしたというんだ‥?) 前へ |次へ |
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