《MUMEI》
担任はたぬき
「いらっしゃ〜…い!?」


(どうしたんだ?)


入り口で固まる拓磨に、俺達は注目した。


「熱烈な歓迎だな、拓磨」

「ま、まぁ、そんなとこです」

「あ、た… 古屋(ふるや)先生じゃん」


部屋に入ってきた人物を見て、守が飛び起きた。


俺達の担任・古屋先生は、その外見から


生徒達の間では『たぬき』と呼ばれていた。


「矢上。まさかここでそれを使うつもりじゃ無いだろうな」


古屋先生は真司の持っていたサッカーボールを指差した。


「俺、コントロールいいですよ?」


真司は担任の前でリフティングを始めようとしたが…


「ば、馬鹿!」


古屋先生が慌てて止めた。


(何でそんなに慌ててるんだ?)


真司は一日目は室内でリフティングをしていても、注意はされなかった。


「どうしたんですか?」


あまりの慌てぶりに、真司はリフティングをやめてボールを持った。


「…この部屋だけ、他より高いんだよ。たまたま人数の都合でお前達が当たったんだ。

頼むから、綺麗に使ってくれよ。

最悪、請求はお前等の保護者にするからな」


最後の保護者に請求という部分で、真司と俺の顔が曇った。

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