《MUMEI》
集合場所変更
「じゃあ、私達の部屋にするしかないわね」


古屋先生の話を報告すると、志貴がそう言ってきた。


三日目の夕食はジンギスカンで、宴会場には肉が焼ける音と香ばしいにおいが広がっていた。


「だな」


拓磨がかなり嬉しそうに頷いた。


修学旅行前から、最終日の夜は皆で集まって部屋で遊ぶ約束をしていた。


当初は、広い方


つまり、俺達の部屋で遊ぶ約束をしていたが


菓子やジュースも持ち込む予定なので、どうするか志貴に改めて相談したのだった。


「じゃあ、後で祐也にメールするからね」

「…俺?」

「うん」


志貴は、俺の皿に焼けた肉を乗せながら頷いた。


(視線が痛いんだけど…)


拓磨のあからさまな視線に、俺は断りたくなったが


「いいわよね?」

「…うん」


(悪いな、拓磨)


俺は


志貴の有無も言わせぬ笑顔の方が怖かった。


「なぁ、そっちのベランダ何かある?」

「多分、リフティングできるわよ」

「やった!」

「本当、サッカーバカ」


俺と志貴と拓磨をよそに、真司と瀬川はそんなやりとりをしていて


守はガツガツと、渡辺はのんびりと、食事を続けていた。

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