《MUMEI》
月裔
「‥いないか‥」

 平安京を一周し朱雀門の側へ来ても、彩貴の姿は見当たらない。

(擦れ違ったか‥?)

 そう、夜桜が思っていると。

 ‥後方から、足音が近付いて来た。

「‥っ誰だ‥!?」

「──私です、姫様」

「‥‥‥お前‥月裔(げつえい)では無いか」

 月裔は、彩貴と同じく陰陽師であり──内裏の方へもよく赴いている。

「何故‥お前が此処に‥?」

「彼女が──どうしても姫様にお会いしたい、と」

「彼女‥?」

 夜桜が、月裔の傍らに目をやると。

 そこには、己に良く似た娘の姿。

「奏美(そうび)──奏美では無いか、どうしたんだ‥?」

「──済みません、こんな夜中に──」

 奏美は、申し訳なさそうに頭を下げた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫