《MUMEI》
Bar
カフェを出て、そのままバーへ直行。
その間も貴士は、先程の老婆の事を考えていた。


しかし、自問自答してもまるっきり答えが出ず、結局モヤモヤが残ったまま、バーに着いてしまった。

「あ〜、気合い入れ直さないと…。」

酒場で暗い顔は御法度。


“バーテンダーは俳優だ!”


それがマスターの口癖なのだ。

「よしっ!」

貴士は両頬をパシパシ叩くと、いざ扉を開けた。


「おはようございます!」
「おう!貴士、ナイスタイミング!」

「はい?」

「俺、今からちょっと出掛けないといけないから、暫く店番頼むわ!」

「え?俺何も作った事ないんですけど…」

「大丈夫!今日平日だし、こんな時間から客なんて来ないよ。」

「いや、でも…」

「悪い!あんま時間ないんだわ!ほんの二、三時間で戻るから!!」

「あ!ちょっと、マスター…」

貴士の言葉を無視して、マスターはそそくさと出ていった。

「マジかよ…」


一人残された貴士は、心細さを感じながらも、開店準備に取り掛かった。

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