《MUMEI》
俺を無視すんな!
「俺だけじゃなかったんだ…」
雄太は態度を一変させ、ガッカリしたように俯く。すると中川は鼻で笑った。
「フッ。当たり前だろ?時給一万だぜ?誰だって惹かれるだろ。」
「内容はチョット際どいですけどね〜。」
また田辺が入る。
「ハハッ!まぁな。」
楽しそうに会話をする中川を見ていたら、雄太は段々切なくなってきた。
(そんな楽しそうにすんなよっ…!)
泣きたくなる気持ちに、中川は追い討ちをかける様な言葉を浴びせた。
「お前の代わりなんていくらでも居んだよ。」
「!!!」
「別にお前じゃないといけない理由はない。」
雄太は何も言い返せなかった。こんなヒドイ事を言われても、それは確かに的を得た事実なのだから。
「そういや、林さんでしたっけ?一体なんで中川さんの家に居るんです?」
俯いたままの雄太の耳に田辺の声が聞こえた。
この冷めた情況の中にも関わらず、妙に平然と聞こえるその声にバッと顔上げた。
「俺はなぁ!!」
「使用人だ。」
雄太の怒りを遮るように中川は静かに、しかし強い口調で答える。
「林は使用人だ。ただの家事係り。」
(家事係り…ただの…)
余りの言われ様に頭が真っ白になる。
「へぇ〜。じゃあメイドさん?」
「メイドか、そりゃいいな。でも男だから執事だろ?」「アハハッ!そうですね〜!」
まるで雄太を無視するような二人の会話。
(そんな言い方ないだろ…そんな言い方…そんな…)
「俺は使用人なんかじゃねえ!!」
雄太は叫んだ。
「俺がコイツの…中川のモデルなんだよ!!」
言ってしまったそのセリフに不思議と後悔はなかった。
前へ
|次へ
作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ
携帯小説の
(C)無銘文庫