《MUMEI》
詩夢    (完結)
「夜桜が──この子に付けてくれるの?」

「無礼で無いのならばな」

「無礼だなんて、全然──。是非お願い」

「──では、『詩夢(しおん)』と」

「──詩夢──」

「音によって詩を唄い、聴く者を夢へと誘う──そいつはそういう妖だと、私は思う‥のだが、嫌だろうか‥」

「ううん、詩夢は凄く喜んでいるわ」

「──そうか、良かった」

 夜桜は息をつき、近付いて来た邸の庭の桜に目を向ける。

「じき‥夜が明けるな」

「──綺麗」

「?」

「桜──」

「──ぁぁ」

 夜桜は振ってくる花びらの一枚を受け止め、陽桜の手に持たせてやる。

 陽桜は微笑し、再び月明りに浮かび上がる桜を見上げた。





◇◇◇

『夜桜』‐完結

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