《MUMEI》
最後の勝負
残ったカードは、拓磨が二枚・俺が一枚だった。


「じゃあ、引くぞ」

「ちょっと待て!」


拓磨は真剣に二枚をシャッフルした。


「拓磨ー頑張れー」

「はい!!」


志貴の応援に、拓磨は気合いを入れ、俺にカードを差し出した。


カードを持つ手にかなり力が入っていた。


(そういえば…)


守も含めた三人の時も、拓磨は力を込めた。


その後少しして、守から拓磨にジョーカーが渡った。


それは、守がその瞬間『よっしゃ!』と喜んだから、俺にもわかった事だった。


(だったら…)


「なぁ、お願いがあるんだけど…」

「何だ?」

「カード、上下逆にしてもらっていいか?」

「別にいいけど…」


拓磨は首を傾げながら、俺の指示に従った。


(やっぱり)


拓磨のカードは、気合いを入れて握った為、少ししわができていた。


そして、俺はよりしわが多い方を


後から来たジョーカーではない方を


引いた。


「よし、上がり」


その瞬間、喜んだのは俺だけで


志貴の期待に応えられなかった拓磨はガックリと肩を落とし


他のメンバーも残念そうな表情をした。

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