《MUMEI》
蝶の眠り
そのライヴハウスは暗い路地を抜けた先にあった。


壁の塗装は剥げてヒビが入り、所々にスプレーの落書きがしてある。


恐らく、正面玄関に貼られたレイヤーやポスターがなければ、誰一人として、ここがライヴハウスだとは気付かないだろう。



錆びて茶色く変色した看板には"LIVEHOUSE CrossRoads"と書いてあるようだった。



『ここか…』

俺はそう呟いて、白く汚れたガラス張りの扉を開いた。



中に入ると微かな振動が下腹を揺るがした。

すでにライヴは始まっているらしい。


受付でお金を払い、その先にある扉を目指す。

近づくにつれ、振動は強まった。



――――――――!!。


重苦しい防音扉を開けた瞬間、俺は聴覚と視覚を一瞬にして奪われた。





激しく打ち鳴らすリズム。

それに同調する重低音。

旋律を奏でる綺麗な歌声。



全てがこの会場中の人間を狂わしていた。

人々は飛び交い、拳を突き上げ、踊り狂っていた。



自然と俺自身もそれに混じる事を強要されているようだった。



彼ら―――。
この人々を狂わしている演奏者達は"Butterfly's Sleep"といった。


この業界では有名なアマチュアバンドらしい。



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