《MUMEI》

「光……お前はもっと自分を大切にしなさい。今はもう自分だけの体じゃない、俳優の高遠光でもあり、俺の高遠光でもあるんだから。」


「……やだ、ぷろぽーず?」

光が両手に頬を乗せる。


「反省してないな?」


「してます。」

正座をし直す。


「罰として断った映画の件は引き受けてもらうからな。」

マネージャーと俺は内通していて、光は海外での撮影や多少の無茶もある映画のオファーを仕事が忙しいと理由を付けて断った。
それを説得するように言われていたのだ。


「そんな……!益々会えなくなるじゃん!」

そうか。
光は仕事の内容よりも俺と会えないことの方が辛い訳か。


「次の仕事が終わったら俺も免許取れてるはずだから日帰りだけど光の好きなとこ連れてってやる。」


「本当?」


「本当。」


「……分かった、やる。」

静かに頷く。
聞き分けの良い子だ。


「よしよし。」

頭を撫でると鼻を擦り付けるので、ご近所の木下家に預けているツン(犬)を連想させた。
良い育ち方したな……一介の男子高校生じゃ背負い切れないもの、沢山あっただろう……。
俺は内心、安堵しているのだ。
光と痛み分けすることで深く繋がっていられる。


「明日から……ね。仕事なのですが……」

この光が、手に入る。


「そうだね、ちゃあんと一回だけで。」


「それ、信憑性低いよ?」

結構前から光が疼いてるのは承知していた、その証拠に一度絡んだら離れないくらいに巻き付いている。

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