《MUMEI》

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6年前…猪俣が加奈子の病室を訪れた数日後…。



猪俣は三浦半島に在る、ホスピスの一室を見舞った…。



白を基調とした清潔な部屋には、レースのカーテンを透して、明るい日差しが射し込んでいる。



ベッド脇には白い生花が添えられ、無言のまま此所に居る者の痛みを慰めていた。



それは、これから天国へと召される人間が、最後の刻を過ごすにふさわしい場所だった。



そして介護用ベッドの上には、一人の老人が横たわっていた…。

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