《MUMEI》 愛は会社を救う(80)由香里は今日から一週間、本社へ研修出張に出掛けている。 一方の山下仁美は、今朝になって突然、電話で休暇を願い出たという。 体調不良が理由らしい。 果たして二人が、どんな週末を過ごしたのか。 私には今のところ、それを知る手立てはなかった。 唯一の手掛かりは、由香里から午前中に届いた一通のメール。 私は資料室で一人、スマートフォンのディスプレイを眺めていた。 件名:藍沢です 本文:(v^-^v) 書いてあったのは、これだけだった。 (上手くいった、という意味か?) クールな相棒とも言えるこの愛機が、顔文字の入ったメールを受信するのは初めてのことだった。 ジェネレーションギャップ…思わず溜息が漏れる。 しかし、老け込んでいる暇は無い。 山下仁美も由香里も不在の今日。この機会に、ぜひ確かめておきたい事があった。 私は相棒を腰のホルスターに収め、チャンスを窺うために、独り資料室を出た。 前へ |次へ |
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