《MUMEI》 魔乳寺の掟(ナン)キンカクは何やら様子が変だった。 視線が定まらず、しきりに髪を触っていた。 「あ、姉者?」 どうやらギンカクはその様子の意味に気づいたようだ。 「んは、なんだなんだ?」 僕はよくわからなかった。とりあえずキンカクの顔を覗きこんだ。 「んんっ!?」 キンカクの顔が真っ赤になり、ボフンと湯気が出た。 「姉者、まさかあんなくだらぬ家訓を…?」 「この魔乳寺に住む者として守らなければいけない…掟じゃ」 そう言うとキンカクはずいっとその身を僕に寄せた。 顔が、肌が、胸が、吐息が キンカクの体温が 僕に伝わってくる。 キンカクの鼓動と僕の鼓動が重なり 僕達の世界はその音だけで満たされた。 「お主…わしの婿になれ!」 前へ |次へ |
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