《MUMEI》 三年生達の話「「あ…」」 俺に止められ、二人は『しまった』という顔をした。 「とにかく、座って」 「説明は、俺からしよう」 冷静な希先輩と葛西先輩が、その場をおさめてくれた。 「いじめにあっていたのは朝倉奈都だ」 「え…?」 その時 葛西先輩の言葉を聞いた時、俺が思ったのは 『何故奈都が?』ではなく 『何故、今更奈都が?』だった。 奈都の性格の悪さは一部にはもう有名らしいし もし、俺に近付いた事がいじめの原因だとしても、遅すぎるのでは無いだろうかと思った。 なのに 「あのね、言いにくいけど、田中君のファンクラブが中心にやってたみたいなの」 「三年じゃなくて、一、二年な」 希先輩と祐は、眉間にしわを寄せて言った。 「『田中先輩に迷惑かけるなんて最低』とか言って、大勢で囲んでた時もあってさ。 そこを政宗ちゃんが止めてくれたらしいんだ」 「丁度部活行く途中だったし。あそこ、人通り少ないから、いろいろ呼び出しあるんだよね」 「大蔵は、知っててわざと通ってるんだよな」 「いじめは最低だからな」 「何でそんな事に…」 俺はそれしか言えなかった。 前へ |次へ |
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