《MUMEI》 残る謎「しかし、今回はそれが無かった。 無い上に、朝倉は田中にベタベタしたり、田中に迷惑をかけた。 ファンクラブの怒りはすごかっただろうな。 もし会長が田中は朝倉に興味が無いと伝えていたら、あそこまではならなかったと思うぞ」 「…あそこまで?」 「俺が来なかったら、朝倉には一生消えない傷が顔に残っていた」 (そんな!) 「でも、志貴ちゃんや頼君がそこまでするなんて、信じられない」 俺の思いと同調するように、希先輩が疑問を口にした。 「それにさ、いじめが広がるのが早過ぎる気がする」 「それは俺も思った」 祐の言葉に、葛西先輩も同意した。 「あぁ。俺も津田がそこまで指示したり、あおったりするとは思えない」 大蔵先輩も、頷いた。 そして 「誰かが、暗躍している」 そう、言った。 とりあえず、四人の活躍でいじめは止まったらしいが、『誰か』の正体は謎のままらしい。 (それにしても、大蔵先輩、意外と冷静なんだな) まるで刑事のようだと、俺は思った。 そして、俺は重い足取りでマンションを出た。 前へ |次へ |
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